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Message

多難な時こそチャンス、多様なビジネス展開を

世界は今、大きく揺れ動いています。
米国では昨年、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任して相互関税政策を導入、自国第一の保護主義が強まりました。日本では初の女性首相として高市早苗政権が誕生し、中国との摩擦は一段と激化しています。覇権主義が強まって国際社会の分断が進む中、日本は難しい立ち位置を強いられています。

生鮮食品や花卉(かき)類の輸出入を主軸に据える貿易商社のわが社にとって、緊張を増す国際情勢はビジネスに大きく影響します。多難な時代ゆえに為替相場の動向や各国政策の変化に柔軟に対応しながら事業展開していかざるをえません。仕入れ先、販売先、事業拠点のそれぞれを多様化することでリスクヘッジに努めねばなりません。とりわけ昨今の円安基調は輸入にばかり偏れば危うく、輸出とのバランスが課題です。

とはいえ、チャンスでもあります。海外からみると円安で日本産の物品が買いやすく、優れた国産食材を世界各地に届けるには好都合です。東南アジアや中東向けに鮮魚や和牛、酒、調味料といった食材の輸出に力を入れていますが、海外での日本食ニーズは高まっており、輸出事業はまだまだ伸びるとみています。単に輸出するだけでなく、海外で日本食セミナーを開催するなど食材の旬や調理の仕方といった奥深い和食文化の魅力を積極的に発信していきます。

主力の北極圏の生鮮サーモンの輸入は、徹底的に鮮度と品質にこだわり、高い評価を受けています。ただ、長引くロシアによるウクライナ侵略など地政学リスクを考慮し、南米チリからもサーモンの空輸を並行しています。今年はチリの最南端で始めたウニの生産事業を本格化させる予定です。主に冷凍ウニを輸入してきましたが、品質保持や輸送経路に知恵を絞り、新鮮でおいしい生ウニを日本の消費者にお届けしたいと考えています。また、東南アジア域内の需要を取り込む拠点として、シンガポールとマレーシアの国境近くでエビを中心とした水産加工場の稼働も急ぎます。

特筆すべきは、ベトナムの自社農場で育てた菊(スプレーマム)の好調な販売です。夏場の異常な高温の影響で国産菊の出荷が不調な中、花卉栽培で最も大事な土作りにこだわり、良質な切り花を通年で安定して供給できたことで、国内市場から高い支持を得ました。2008年に始動したベトナムでの菊栽培事業が完全に軌道に乗ったと言え、喜びもひとしおです。

社業が順調に拡大している今、昨年から重点的に取り組んできたのが管理部門の充実です。さらなるステップアップに向け、強固な管理体制は必須であり、原価管理や在庫管理、売掛金管理を全面的に見直すことで無駄を省き、リスクを回避して、より強い経営につなげたいと考えるからです。

新たに品質管理室を立ち上げ、食の安全を徹底すると同時に、付加価値の高い新商品開発にも注力しています。わが社の業務に見合った生成人工知能(AI)やデジタル人材の活用も欠かせません。少人数で最大の成果をあげるために、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、業務効率化を図っていきます。

人材の確保・育成は喫緊の懸案です。年齢や社歴にかかわらず、やる気と任務をやりきる力がある社員に積極的に現場を経験させ、海外出張させて実践力を培い、成果を出した社員には利益をしっかり還元します。社員の長期休暇取得を促し、ワークライフバランスの充実にも取り組んでいます。特に子育て世代の社員に対しては、仕事と家庭生活の両立が無理なく実現できるよう、柔軟な働き方を可能とする体制を整えています。今夏の新社屋への本社移転計画は仕事をしやすい環境整備の一環で、社員のエンゲージメントを高めるためです。

1973年の創業から半世紀余り、幾多の時代の荒波にもまれながらも、わが社は堅実な歩みを続けてまいりました。おかげさまで社員数63人の規模ながら、昨年の売上高は初めて400億円を突破しました。ひとえにお客さまや取引先の皆さまのご助力と、社員の頑張りがあっての結果と感謝しています。

わずかな変化を敏感に察知し、高い信頼と安全性を備えた優れた商材を見いだし、調達し、貪欲に新たな事業を創造していくのが貿易ビジネスの醍醐味(だいごみ)です。今後も強みのある「食」を中心に築いてきた国際的なネットワーク、パートナーシップ、ノウハウを最大限に生かして着実に社業を成長させていく所存です。

当社創業者の米田多智夫の経営理念である「三方(売り手・買い手・世間)良し」「現場主義」「まかぬ種は生えぬ」の精神を引き継ぎ、迷った時、困った時は必ずそこに立ち返り、愚直に創業の理念を追及したいと考えています。

世界中に「おいしいもの」「美しいもの」を届けることを使命に、社員が安心して働ける場所を提供するとともに、一人ひとりの情熱と意欲を引き出して、オーシャン貿易の未来を形づくっていきたいと思います。加えて、異なる文化や歴史を持つ国々との交易を通じて相互理解を深め、地道に交流を積み重ねていくことが、微力ながら世界平和につながると確信しています。

2026年1月
オーシャン貿易株式会社 代表取締役社長

金子 直樹